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Story Palette vol.002

ストーリーパレットは、
カラフルな絵の具のパレットのように
さまざまなライフスタイルを生きる人やモノを
ご紹介するコーナーです。
岡山県 シェミン サンドラ 様
Harokka Customer Interview Vol.2

北木島との出会い
瀬戸内海に浮かぶ、笠岡諸島・北木島。 花崗岩の産地として知られるこの島に、ひとりのフランス人女性、シェミン・サンドラさんが暮らしている。
東京で便利な暮らしを送りながらも、心のどこかで少し息苦しさを感じていたというシェミンさん。 子どもの頃に過ごしたフランス西部の故郷、レ・サーブル=ドロンヌは海に近く、日々の暮らしの中にはいつも海の気配があった。だからこそ、在宅で働けるようになったことをきっかけに、毎日海を感じられる場所での生活を真剣に考えるようになったという。
「東京は便利なところですが、少し疲れてしまうこともありました。生まれ故郷のように、海を近くに感じられる場所に住みたいと思っていたんです」
彼女が北木島と出会ったのは、今からおよそ15年前。 「Manabeshima Island Japan」を読んで感動したことがきっかけで、岡山県笠岡市を訪れた際、初めてこの島に足を運んだ。港町らしい穏やかな空気や、どこか懐かしさを感じる風景に強く惹かれ、「ここに住みたい」と直感したという。
その後、実際に手に入れたのは一軒の古民家。丁寧につくられた日本家屋の佇まいには、古き良き日本の故郷のような美しさがあり、シェミンさんの心をつかんだ。
海の近くで暮らしたいという長年の憧れと、初めて北木島を訪れた時の直感。その二つが重なり、彼女はこの島で新たな暮らしを始めることになった。
古い家に自分らしい色を重ねて
シェミンさんが北木島で暮らす家は、昔ながらの趣を残した古民家だ。 その空間に少しずつ自分らしく手を加えながら、日々の暮らしを楽しんでいる。
現在は、古民家の一室をオフィスとしてリノベーション中。 珪藻土の壁を使い、テーマカラーを取り入れながら、自分の感性に合う空間を少しずつ作っているという。
「自分で決めて、自分で選ぶことが大切なんです。自分の手で作っていくと、その場所がもっと好きになります」
フランスでは、古い家を自分で修理したり改装したりしながら暮らすことが、特別なことではなく、ごく自然な楽しみのひとつだそうだ。家はただ住む場所ではなく、自分の趣味や個性を映し出す大切な場所。壁の色や家具、インテリアの選び方にも、その人らしさが表れる。
「フランスでは、部屋ごとにテーマを決めたり、個性を大切にする人が多いです。家の中も、自分の好きな色や好きなものを選んで、自分らしく作っていきます」
一方で、日本の住宅はもともとの造りがしっかりしていて、質の高さを感じることも多いという。その反面、まだDIYに対して少しハードルの高さを感じる人が多いのではないかと話す。
「完璧じゃなくても、失敗してもいいと思うんです。少し曲がっても、それも味になりますし、日本には“わびさび”の考え方もありますよね」
古いものに新しい感性を重ねながら、暮らしを自分の手で整えていく。その過程そのものが、シェミンさんにとっての楽しみでもある。
また、シェミンさんは自身のInstagramを通して、北木島での暮らしや日本の住まいの魅力を発信している。投稿を見ているのは、日本の暮らしに関心を持つフランスの人たちだ。 島ならではの穏やかな日常や、日本家屋の美しさ、古いものを生かしながら暮らす様子に、興味を寄せる人も少なくないという。
「日本に旅行するのは大変ですが、自分の部屋を日本風にすることはできるでしょう?だから毎日たくさんの質問がくるんです」
北木島の古民家での暮らしは、彼女にとって自分らしさを表現する場であると同時に、日本の住まいの魅力をあらためて見つめ直す時間にもなっている。
島で見つけた人のぬくもり
北木島での暮らしの中で、シェミンさんが何より魅力に感じているのは、人との距離の近さだ。 都会では地域の人と深く関わる機会が少なく、会話のないまま日々が過ぎていくことも珍しくなかった。けれど北木島では、日常の中に自然な会話があり、困った時にはお互いに助け合うという空気が根づいている。
「島の人たちは本当に優しいです。誰かが困っていたら、みんな自然に助けてくれます。それが特別なことではなく、当たり前にあるんです」
そうした温かい交流の中に身を置くうちに、自分もこの島のために何かできることをしたいと思うようになったという。
シェミンさんが思い描いているのは、観光客のためではない、島民のためのコミュニティカフェだ。 誰かと少し話したい時、ひとりでいるのが寂しい時、ふらりと立ち寄ることができる場所。人と人とが自然につながり、ほっとできる居場所を作りたいと考えている。
「島には温かい人たちがたくさんいます。でも、高齢の方やひとり暮らしの方の中には、話す機会が少ない人もいて、みんなが集まれる場所があったらいいなと思うんです」
北木島は、シェミンさんの生まれ故郷であるレ・サーブル=ドロンヌともどこか似ている。 海の近くの空気、人々の距離感、高齢者と自然に言葉を交わす日常、そして人口減少という共通の課題。 遠く離れた二つの土地に共通点を感じるからこそ、この島での暮らしはシェミンさんにとって、より特別なものになっているのかもしれない。
北木島で出会った人々の優しさに支えられながら、自分もまたこの場所に温かさを返していきたい。 そんな想いを胸に、シェミンさんは今日も海のそばで、自分らしい暮らしを育んでいる。
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